法定福利費とは?

 法定福利費とは、法律によって決められた福利のために使用する費用のことで、次に掲げる企業負担分の健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料、労災保険料などを指します。

健康保険料

 健康保険とは、被保険者である従業員本人やその家族がけがや病気、出産や死亡をした際に、必要に応じて医療費が支給される制度のことで、保険料は企業と従業員が折半します。

厚生年金保険料

 厚生年金保険とは、被保険者が高齢者になった際や障害の状態になった際、亡くなった際に年金や一時金を支給する制度のことで、保険料は企業と従業員が折半します。

介護保険料

 介護保険とは、介護サービスを必要とする高齢者や障害者などを支援する制度(加入は40歳以上)のことで、保険料は企業と従業員が折半します。

労災保険料

 労災保険とは、従業員が業務中や通勤中に事故や災害によってケガや病気、障害や死亡した場合に支給される制度のことで、保険料は企業が全額を負担します。

雇用保険料

 雇用保険とは、従業員の生活及び雇用の安定を図るとともに、再就職を促進するために支給される制度のことで、保険料は企業が一定額(残りは従業員が負担)を負担します。

福利厚生費とは?

 福利厚生費とは、従業員の福利厚生を目的として、全員に平等に支出された費用の総称であり、広義には法定福利費も福利厚生費に含まれます。
 因みに、福利厚生費には、次に掲げる慶弔見舞金、社内行事、社員旅行、健康診断の受信料、社宅の家賃などが該当します。

慶弔見舞金

 結婚祝、出産祝、見舞金、香典などの慶弔金、お祝いの品、花輪の費用などが、福利厚生費として認められるには、その支給が「福利・厚生施策」の一環で行われるものであり、すべての従業員・役員にその支給を受けることができる機会が平等に与えられていることが必要となります。

社内行事

 全従業員を参加対象とした忘年会や新年会などの社内行事を行ったときの費用を企業が負担し、かつ次の条件を満たした場合には、福利厚生費として経費計上できます。
①役員・従業員全員が参加すること(やむを得ない事情での不参加者を除く)。
②企業の費用負担が一律であること(従業員におおむね一律に、社内において供与されること)。
③社会通念上、常識と考えられる範囲の金額であること
④領収書や、社内案内チラシ(全従業員対象または支店や部署ごと)の保存
 なお、役員や一部の社員のみで行う場合や特定の支店や部署だけで行う場合は、従業員全員に平等ではないので、接待交際費または参加者個人への給与として課税されます。

社員旅行

 企業が主催して行う従業員のレクリエーション旅行、いわゆる「社員旅行」については、国税庁のホームページによると、その費用を福利厚生費として計上するには、次の2つの条件を満たす必要があります。
(1) 旅行の期間が4泊5日以内であること。
 海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
(2) 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。
 工場や支店ごとに行う旅行は、それぞれの職場ごとの人数の50%以上が参加することが必要です。
 なお、役員だけで行う旅行、取引先に対する接待・供応・慰安等のための旅行、実質的に私的旅行と認められる旅行、金銭との選択が可能な旅行の場合は、その旅行に係る費用は給与、交際費などとして適切に処理する必要があります。

健康診断の受診料

 「健康診断を行うことは事業者に課された義務であり、同時に健康診断を受診するのは労働者の義務でもある」と労働安全衛生法66条で定められています。
 健康診断は雇入れ(入社)時や海外派遣時、一定の有害業務への従事のときなど様々な時点で実施義務があります。
 1年以内に1回受診する一般的な定期健康診断については、役員や従業員の健康診断受診料を会社が負担し、かつ次の条件を満たした場合には、福利厚生費として経費計上できます。
①全従業員が対象である。ただし、会社の規定で一定年齢以上を対象とした場合は、その年齢以上の従業員全てを対象とする。
②実施される検診項目は、労働安全衛生規則44条に定められているものである。ただし、受診者の年齢などにより省略できる検査もある。
③受診料の支払いは、会社から医療機関へ直接行われている。
 なお、著しく高額な場合や、役員または一部の従業員のみを対象とした場合は、役員賞与や給与として課税となります。

社宅の家賃

 従業員から賃貸料相当額の半額以上を徴収している場合、家賃の企業負担額は福利厚生費として計上できます。
 つまり、企業が従業員に無償で社宅を提供したり、賃貸料相当額の半額以下で貸し出す場合には従業員の給与とみなされ、課税対象となります。

法定福利費と福利厚生費の違い?

 法定福利費と福利厚生費は、どちらも従業員の生活を充実させるための費用ですが、これらの費用には以下のような違いがあります。

・法定福利費:法律によって企業に費用負担が義務づけられている企業内の福利費
・福利厚生費:企業の裁量に任されている(法的義務の生じない)企業内の福利費

 つまり、従業員の福利厚生を目的としたものであれば、福利厚生費に該当する支出に明確な定義はなく、企業の取り組み次第で幅広い支出が該当することになります。